歯科矯正
大人になってからはじめる歯列矯正について

はじめに
「歯列矯正は子どもの頃にするもの」と思っている方も多いかもしれません。しかし、近年では大人になってから歯列矯正を始める方が増えています。美しい笑顔を手に入れるだけでなく、健康面や心理面でも大きなメリットがあるからです。本記事では、大人の歯列矯正のメリット、課題、治療法について、エビデンスに基づいて詳しくご紹介します。また、当院では高い専門性が必要とされる歯列矯正治療は矯正専門医が担当しており、そのメリットについてもお話しします。
大人の歯列矯正のメリット
1. 見た目の改善
歯列矯正の最も分かりやすいメリットは、見た目の改善です。歯並びが整うことで、笑顔や顔全体の印象が大きく向上します。研究によると、整った歯並びは他者に対して好印象を与え、社会的にも有利に働くことが報告されています( Shaw WC, 1981 )。
例えば、歯並びが美しい人は、仕事の面接やプレゼンテーションで信頼感を与えやすく、プライベートでも好意的な印象を持たれることが多いです。美しい笑顔は、あなたの自信を高め、人生全体をよりポジティブにしてくれるでしょう。
2. 健康への影響
歯周病リスクの低減
不正咬合(ガタガタの歯並び)は歯ブラシが届きにくい場所を作り、プラークが蓄積しやすくなります。矯正治療を行うことで歯並びが整い、清掃しやすい環境が整います。これにより、歯周病のリスクが軽減されることが確認されています( Ruf S et al., 2001 )。
むし歯リスクの低減
密接した歯列はむし歯菌の温床になりがちですが、矯正治療によって歯間のアクセスが改善されることで、むし歯の予防にもつながります。特に、ワイヤー矯正やマウスピース矯正後のアフターケアが徹底されることで、むし歯リスクが大幅に低下します( Choi Y, 2020 )。
3. 自信と自己肯定感の向上
歯並びが整うと見た目が改善されるだけでなく、自分に対する満足感が向上します。研究では、矯正治療後に「人前で笑顔になることへの抵抗が減った」「自分に自信が持てるようになった」といったポジティブな変化が多くの患者さんに見られると報告されています( Klages U et al., 2006 )。自己肯定感の向上は、仕事や人間関係にも良い影響を与えるでしょう。
矯正専門医が行うメリット
当院では矯正治療を矯正専門医が担当しています。専門医に治療を受けることには、次のようなメリットがあります。
1. 高度な専門知識と経験
矯正専門医は、歯学部を卒業後に歯列矯正に特化した追加の教育と訓練を受けており、複雑な症例にも対応できます。特に、大人の矯正治療では加齢に伴う骨の変化や歯周病のリスクを考慮する必要があり、専門医の経験が重要です。
2. 個別化された治療計画
専門医は最新の診断技術を用いて、患者一人ひとりのニーズに応じた治療計画を立てます。これにより、無駄のない効率的な治療が可能です。
3. 高い治療成功率
研究でも、矯正専門医による治療は一般歯科医に比べて成功率が高いことが示されています( Abei Y, et al., 2004 )。特に、長期的な安定性を考慮した治療が期待できます。
4. 新しい技術と治療法の導入
専門医は常に最新の矯正技術を学び、患者さんにとって最適な方法を提供しています。目立ちにくいマウスピース矯正や裏側矯正など、審美性を重視した治療も安心して受けられます。
治療法の選択肢
矯正治療にはいくつかの方法があります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法を選びましょう。
- ・ワイヤー矯正: 歯を強力に動かすための標準的な方法。治療効果が高いですが、目立ちやすい点がデメリット。
- ・マウスピース矯正: 透明で目立ちにくく、取り外しが可能。軽度から中程度の不正咬合に適しています。
- ・裏側矯正: 歯の裏側に装置を取り付けるため、表から見えません。審美性を重視する方におすすめです。
よくある質問とその回答
Q1: 矯正治療は何歳までできますか?
A: 矯正治療に年齢制限はありません。骨が成長している子どもの時期に比べると、治療期間がやや長くなる可能性がありますが、70代や80代の患者さんでも治療を受けた例があります。重要なのは、歯や歯ぐきの健康状態です。歯周病が進行している場合には、まずその治療を優先することがあります。
Q2: 治療中の見た目が気になります。目立たない方法はありますか?
A: 最近では、矯正装置が目立たない治療法が充実しています。例えば、以下のような選択肢があります。
- ・マウスピース矯正(インビザラインなど): 透明で目立たず、取り外し可能な矯正装置です。
- ・裏側矯正: 歯の裏側に装置を装着するため、正面からは見えません。
- ・ホワイトワイヤー: 歯に近い色のワイヤーを使用することで、目立ちにくくなります。
審美性を重視する方には、これらの方法がおすすめです。
Q3: 治療中の痛みが心配です。どれくらい痛いですか?
A: 痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの患者さんが治療開始直後や装置の調整後に軽い痛みや圧迫感を感じることがあります。この痛みは通常1~2日で治まり、鎮痛薬が必要になることは稀です。
また、マウスピース矯正はワイヤー矯正に比べて痛みが少ないと感じる方が多いです。不安な場合は、事前に矯正専門医に相談してください。
Q4: 矯正治療にはどれくらいの期間がかかりますか?
A: 治療期間はケースバイケースですが、軽度の不正咬合であれば約1年、中度から重度の場合は2~3年かかることがあります。また、治療後は歯並びを維持するための保定期間が必要です。専門医と相談して、自分の症状に合った治療計画を立てましょう。
Q5: 治療中に普段の食生活や生活習慣に制限はありますか?
A: 矯正装置の種類によりますが、以下の点に注意してください。
- ・ワイヤー矯正の場合: 硬いものや粘着性の高い食べ物(キャンディ、ガムなど)は装置が外れる原因になるため避けてください。
- ・マウスピース矯正の場合: 食事の際に装置を外すことができるため、特に制限はありません。ただし、食後は装置を装着する前に歯磨きを行いましょう。
いずれの場合も、適切な口腔ケアを行うことが重要です。
Q6: 矯正治療が終わった後、歯並びが元に戻ることはありますか?
A: 矯正治療後、歯並びが元に戻る(後戻り)を防ぐために、「保定装置(リテーナー)」を装着します。これを正しく使用することで、歯並びを安定させることができます。リテーナーの使用期間は個人差がありますが、専門医の指導に従うことが重要です。
Q7: 仕事が忙しいのですが、通院頻度はどれくらいですか?
A: 通院頻度は矯正装置の種類や治療計画によりますが、一般的には4~6週間に1回程度です。マウスピース矯正の場合、複数の装置をまとめて受け取ることができるため、通院頻度をさらに減らすことも可能です。お忙しい方は、専門医と相談して柔軟なスケジュールを組みましょう。
まとめ
大人の歯列矯正には多くのメリットがあります。見た目だけでなく、健康や心理面での効果も期待できます。また、専門医による治療は、より高い精度と満足度を提供します。もし興味があれば、ぜひ一歩踏み出してみてください。当院では矯正専門医が一人ひとりに合った治療を提案し、理想の笑顔を実現するお手伝いをいたします。
参照
1.Shaw WC. The influence of children’s dentofacial appearance on their social attractiveness as judged by peers and lay adults. American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics. 1981.
2.Ruf S, et al. Orthodontic treatment and its impact on periodontal health. Journal of Clinical Periodontology. 2001.
3.Choi, Y. Relationship between orthodontic treatment and dental caries: results from a national survey. International dental journal. 2020.
4.Klages U, et al. Development of a questionnaire for assessment of the psychosocial impact of dental aesthetics in young adults. European Journal of Orthodontics. 2006.
5. Abei Y,et al. Comparing orthodontic treatment outcome between orthodontists and general dentists with the ABO index. American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics. 2004.